2026年3月11日 – Synopsys は Ansys 2026 R1 を発表し、両社の技術を統合した初の共同ソリューション群を公開した。AI を活用した設計探索、マルチフィジックス解析、デジタルツイン強化など、システムレベルの開発効率を大幅に高める機能が多数追加されている。特に、材料・光学・安全解析・制御ソフトウェアなど複数領域を横断する統合ワークフローが提供され、複雑化する製品開発に向けた「システムアウェア」な設計基盤を強化する内容となっている。
発表の背景
半導体・自動車・航空宇宙・産業機器などの分野では、製品が高度にソフトウェア化・システム化し、複数領域の設計を同時に扱う必要性が急速に高まっている。
- AI 活用による設計高速化
- マルチフィジックス解析の早期適用
- 材料・光学・電子・ソフトウェアの統合設計
- デジタルツインによるリアルタイム性能予測
こうした要求に対し、Synopsys と Ansys の統合は「EDA × シミュレーション × AI × デジタルツイン」を一体化する方向へ進んでおり、今回のAnsys 2026 R1 はその最初の結合成果となる。
発表内容の詳細
Synopsys-Ansys の共同ワークフロー
今回のリリースでは、複数の領域で両社ツールが直接連携する統合ワークフローが提供された。
| 統合領域 | 内容 | 技術的意義 |
|---|---|---|
| 機能安全(VC FSM × medini analyze) | システム〜チップの安全解析を自動連携 | トレーサビリティ向上、手作業削減、車載/航空宇宙向け安全認証の効率化 |
| 材料開発(QuantumATK × Granta MI) | 原子スケール材料解析 → 企業材料DBへ直接登録 | 材料特性の一貫性確保、材料選定の早期最適化 |
| フォトニクス(OptoCompiler × Lumerical FDTD) | デバイス設計と光学シミュレーションを統合 | Verilog-A モデル自動生成、光学挙動の整合性向上 |
| 制御ソフトウェア(SCADE × TPT) | モデルベース開発とテスト自動化を統合 | ADAS・航空制御などの検証効率化、早期バグ検出 |
これらは従来分断されていた領域をつなぎ、システムレベルでの整合性を確保するための基盤となる。
技術的ポイント
AI を活用した設計探索・自動化
Ansys 2026 R1 では、AI を活用した「エージェント機能」が複数の製品に導入された。
- GeomAI:過去設計を学習し、形状案を自動生成
- Mesh Agent:メッシング失敗の原因解析と修正案提示
- Discovery Validation Agent:解析セットアップの問題を自動検出
- SimAI Pro/Premium:ローカル/クラウドでの高速メタモデリング
- Engineering Copilot:medini、ModelCenter、Rocky に AI アシスタントを統合
これにより、従来専門家が行っていた前処理・設計探索・最適化が大幅に自動化される。
デジタルツインの強化
デジタルツイン領域では TwinAI を中心に大幅な機能拡張が行われた。
- センサーデータとシミュレーションの融合(Fusion Modeling)
- 大規模時系列データ向け Transformer モデル
- ROM(Reduced Order Model)生成ウィザード
- AVxcelerate Sensors の GPU 加速光学エンジン
- NVIDIA Omniverse との統合強化
これにより、リアルタイム性が求められる電力制御、車載センサー、産業機器などで、物理現象の高速推定が可能になる。
システムレベル解析・MBSE の拡張
- Ansys CoSim:複数ツールを分散連携する新しいコシミュレーション基盤
- HFSS-PI:3D パワーインテグリティ解析の高速化
- SAM × ModelCenter:SysML v2 モデルと外部解析の自動連携
- SCADE Display → STK 連携:UI 表示とミッション解析の統合
- HFSS-IC の Synopsys UI 対応:OpenAccess ベースの IC デザイン取り込みを高速化
- FreeFlow のメッシュレス CFD:自由表面流れの高速解析
- STK Antenna Wizard:アンテナモデルの自動生成
これらは、システムアーキテクチャ設計から詳細解析までの一貫性を高める役割を持つ。
今後の展望
Synopsys と Ansys の統合はまだ初期段階であり、今後は以下の方向で進展が予想される。
- EDA とマルチフィジックス解析のさらなる統合
- AI エージェントによる高度な自動化ワークフローの実現
- 材料・光学・電磁界・熱・構造の統合最適化
- システムアーキテクチャと実装設計の連携強化
複雑化するシステム設計に対し、Synopsys-Ansys 連合は「システムアウェア設計」の標準基盤となる可能性がある。
参考ソース


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