この記事で学べること
- MemoryBIST の基本構造と動作原理
- なぜメモリに専用の BIST が必要なのか
- テストパターン(March Test など)の役割
- SoC/ASIC 設計フローにおける MemoryBIST の位置づけ
- 実務での利用シーンと注意点
- 関連用語の体系的整理
概要
MemoryBIST(Memory Built-In Self-Test)は、組み込みメモリ(SRAM、ROM など)をチップ内部で自動テストするための回路である。
外部テスター(ATE)に依存せず、メモリの故障検出を高速かつ高カバレッジで実行できる点が特徴。
一般的な MemoryBIST は以下の要素で構成される:
- テストパターン生成器(Pattern Generator)
- アドレス生成器(Address Generator)
- 比較器(Comparator)
- コントローラ(BIST Controller)
- メモリインタフェース(Wrapper)
MemoryBIST は、SoC の大部分を占める組み込みメモリの品質保証に不可欠な技術であり、量産テスト・歩留まり改善・フィールド診断に広く利用されている。
なぜ重要なのか
組み込みメモリの増加
近年の SoC では、チップ面積の 50〜90% をメモリが占めることも珍しくない。
メモリは微細化の影響を受けやすく、故障モードも多様であるため、高品質なテストが不可欠。
外部テスターでは限界がある
外部テスター(ATE)だけでメモリをテストすると以下の課題がある:
- 高速アクセスが困難
- テストパターンが膨大
- テスト時間が長い
MemoryBIST はこれらを解決し、チップ内部で高速・低コストにテストを実行できる。
歩留まり改善・故障解析に有効
MemoryBIST は、故障位置や故障種類を特定しやすく、リペア(BISR)との連携により歩留まり改善にも寄与する。
基本概念の整理
MemoryBIST(MBIST)
組み込みメモリを自動テストするためのオンチップ回路
例:SRAM のアドレスを順番に走査し、書き込み・読み出しを繰り返す
実務での意味:量産テスト時間の短縮、品質向上、歩留まり改善
March Test(マーチテスト)
メモリの故障検出に特化したアクセスパターンの集合
例:March C-, March Y, March SS など
実務での意味:高い故障カバレッジを確保するための標準的テスト手法
Fault Model(故障モデル)
メモリで発生しうる故障を抽象化したモデル
例:Stuck-at Fault, Transition Fault, Coupling Fault
実務での意味:テストパターンの設計根拠となる
BISR(Built-In Self Repair)
MemoryBIST で検出した故障を、スペア行/列で修復する仕組み
例:冗長ビットを使ったリペア
実務での意味:歩留まり改善に直結する
実務での具体的な利用シーン
量産テスト(ATE)
MemoryBIST を起動し、短時間でメモリ全体をテストする。ATE は結果を読み取るだけなので、テスト時間とコストが大幅に削減される。
初期不良のスクリーニング
ウェハテスト(WAT)で MemoryBIST を実行し、早期に不良チップを除外する。
フィールド診断
製品出荷後に MemoryBIST を実行し、経年劣化やソフトエラーの検出に利用される。
リペア(BISR)との連携
MemoryBIST → 故障検出、BISR → スペア行/列で修復という流れで、歩留まりを最大化する。
誤解しやすい点・注意点
MemoryBIST は万能ではない
- 全ての故障を検出できるわけではない
- テストパターンの選択によりカバレッジが変わる
- 特殊なメモリ(CAM、FIFO など)は専用 BIST が必要な場合もある
テスト時間はパターン数に依存
March Test の種類により、テスト時間が大きく変わる。(例:March C- は比較的短いが、March SS は長い)
メモリインタフェースのタイミング制約
MemoryBIST はメモリの実動作条件で動かす必要があるため、タイミングクロージャが設計上の課題になることがある。
関連する専門用語の整理
| 用語 | 説明 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| MemoryBIST | 組み込みメモリの自動テスト回路 | 量産テストの高速化・品質向上 |
| March Test | メモリ故障検出用のアクセスパターン | 高カバレッジテストの基盤 |
| Fault Model | メモリ故障の抽象モデル | テストパターン設計の根拠 |
| BISR | メモリの自動リペア機能 | 歩留まり改善 |
| ATE | 外部テスター | MemoryBIST と連携してテスト時間短縮 |
| Redundancy | 冗長行/列 | リペアに使用される |
まとめ
- MemoryBIST は、組み込みメモリを オンチップで自動テストするための必須技術
- 外部テスターだけでは困難な 高速・高カバレッジ・低コストのテストを実現
- March Test や Fault Model を理解することで、テスト品質の根拠が明確になる
- BISR と組み合わせることで 歩留まり改善に大きく貢献
- SoC/ASIC 設計フローにおいて、MemoryBIST は 品質保証の中心的役割を担う


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