Keysight、SOS Enterpriseを発表 分散した設計データを統合・管理してAI導入を支援

技術ニュース

2026年2月10日 – Keysightは、半導体設計におけるエンタープライズ規模のAI導入を支援する新ソフトウェア「SOS Enterprise」を発表した。分散した設計データを統合し、ガバナンス・トレーサビリティ・コンプライアンスを自動化することで、AI活用に不可欠なデータ基盤を構築する。複雑化する半導体開発において、企業全体でのIP再利用や設計効率向上を実現する点が特徴となる。


発表の背景:AI導入を阻む“データの分断”という構造的課題

半導体・電子機器の開発は、プロセスノードの微細化、マルチダイ設計、システムレベル検証の高度化により、設計データ量が指数的に増加している。
特に大規模企業では、複数拠点・複数ツール・複数部門にデータが散在し、以下のような問題が顕在化している。

  • 正しいデータバージョンの特定に時間を要する
  • 検証結果やIPの関連性が追跡できず、再利用効率が低い
  • コンプライアンス対応(SBOM、アクセス制御、監査証跡)が手作業で非効率
  • AI/MLツール導入に必要な「整理されたデータ基盤」が整っていない

EDAベンダー各社がAI機能を強化する中、企業側のデータ管理が追いつかないことがAI活用のボトルネックとなっていた。

発表内容:SOS Enterpriseによるエンタープライズ規模のデータ統合基盤

Keysightの「SOS Enterprise」は、既存のSOS Coreを拡張し、企業全体の設計データを統合・管理するためのプラットフォームとして提供される。

主な機能は以下の通り:

データガバナンスの自動化

  • すべての設計ファイル・検証データを「バージョン管理された資産」として扱う
  • データの生成元(lineage)を自動記録し、変更履歴を追跡
  • コンプライアンス要件(SBOM、監査証跡、アクセス権管理)を自動化

分散拠点間での統合管理

  • 地理的に離れた設計チーム間で統一されたデータ管理ルールを適用
  • 地域規制に応じたアクセス制御(例:輸出規制、国別IP制限)
  • IPライブラリの横断検索と再利用促進

AI導入を前提としたデータ構造化

  • 機械学習モデルが扱いやすい形でデータを整理
  • 検証結果・設計ファイル・IPの関連性をメタデータとして保持
  • AIによる設計最適化や不具合予測の基盤を構築

技術的ポイント:EDAフロー全体の“トレーサビリティ強化”

SOS Enterpriseの技術的意義は、EDAフロー全体にわたるデータの一貫性と追跡性を確保する点にある。

  • IP再利用性の向上:バージョン・依存関係・検証ステータスを明確化
  • 検証データの整合性確保:CDC/RDC、DFT、シミュレーション結果などを統合管理
  • 設計変更の影響範囲分析:lineage情報により、変更が影響するブロックを自動特定
  • AI/MLモデルの信頼性向上:データの品質・出所が明確なため、学習データの信頼性が担保される

これらは、チップの複雑化が進む先端ノード(3nm/2nm)やマルチダイ設計において特に重要となる。

ビジネス的ポイント:企業全体の開発効率と競争力を強化

SOS Enterpriseの導入により、企業は以下のメリットを得られる。

  • 開発期間の短縮:IP再利用率向上、データ探索時間の削減
  • 運用コスト削減:手作業のコンプライアンス対応を自動化
  • 品質向上:データ不整合による設計ミスを削減
  • AI導入の加速:データ基盤が整うことで、AIによる設計最適化が可能に

特に、航空宇宙・防衛・自動車など、厳格なコンプライアンスが求められる業界での導入効果が大きい。

今後の展望:AI時代のEDA基盤としての位置づけ

半導体業界では、EDAツールのAI化(Synopsys.ai、Cadence Cerebrusなど)が急速に進んでいる。しかし、AIの性能は「入力データの品質」に大きく依存するため、企業側のデータ基盤整備が不可欠となる。

SOS Enterpriseは以下の領域で波及効果が期待される:

  • AI駆動の設計空間探索(DSE)の精度向上
  • 検証自動化(自動テスト生成、バグ予測)
  • マルチダイ設計におけるIP管理の標準化
  • 企業全体でのEDAフロー統合とDX推進

今後、EDAベンダーやクラウドサービスとの連携が進むことで、より高度なAI活用が可能になると考えられる。


参考ソース

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