1. この記事で学べること
- LVS(Layout Versus Schematic)の正確な定義
- 回路図とレイアウトの整合性チェックが必要となる背景と目的
- LVS が検出する代表的な不一致(ショート、オープン、デバイス不一致など)
- 実務の設計フローにおける LVS の位置づけ
- LVS 結果を読む際の注意点と誤解しやすいポイント
- LVS の全体像を理解するための図解
2. 概要(全体像)
LVS(Layout Versus Schematic)は、レイアウトから抽出した回路(ネットリスト)と、回路図(または論理合成後のネットリスト)を比較し、両者が一致しているかを検証する工程です。
半導体設計では、回路図どおりにレイアウトが作られていなければ、製造後に動作しない。
LVS は、「設計意図(Schematic)」と「物理実装(Layout)」の整合性を保証するための最終関門として機能します。
3. なぜ重要なのか(背景・目的)
背景
- 先端プロセスでは配線層が多く、レイアウトは極めて複雑
- 手作業・自動配置配線のいずれでも、意図しないショートや接続漏れが起こり得る
- デバイスサイズ(W/L)や接続方向の違いが性能に影響する
目的
- 回路図どおりにレイアウトが実装されていることを保証する
- 製造前に致命的な接続ミスを検出する
- 設計フロー全体の品質を担保する
LVS は、DRC(Design Rule Check)と並び、物理検証の中心的役割を担う。
4. 基本概念の整理
LVS の定義
定義:
レイアウトから抽出したネットリスト(Extracted Netlist)と、回路図側のネットリスト(Schematic Netlist)を比較し、
- デバイス
- 配線(ネット)
- 接続関係
- デバイスパラメータ(W/L など)
が一致しているかを確認する工程。
例:
- 回路図では NMOS の W=1.0µm だが、レイアウトでは W=0.9µm → 不一致
- 回路図では A と B が接続されているが、レイアウトでは接続されていない → オープン
実務での意味:
製造後の不良を未然に防ぎ、設計の信頼性を確保する。
抽出(Extraction)
定義:
レイアウトの形状(ポリ、拡散、メタルなど)から、デバイスと配線を認識し、ネットリストを生成する工程。
例:
- ポリと拡散の交差 → MOSFET
- メタル層の接続 → ネット形成
実務での意味:
抽出精度が低いと、LVS の結果も不正確になるため、抽出ルール(PEX ルール)が重要。
LVS が検出する代表的な不一致
| 不一致の種類 | 定義 | 例 | 実務での意味 |
|---|---|---|---|
| ショート(Short) | 本来別ネットの配線がつながってしまう | VDD と信号線が短絡 | 致命的。チップが動作不能 |
| オープン(Open) | 接続すべき配線がつながっていない | 入力ピンが浮いている | 動作不良・リーク |
| デバイス不一致 | デバイスの種類・数・パラメータが異なる | PMOS が NMOS になっている | 回路特性が変わる |
| 階層不一致 | 階層構造が一致しない | サブセルのインスタンス名違い | 大規模設計で頻発 |
5. 実務での具体的な利用シーン
カスタムレイアウト(アナログ・メモリ)
- トランジスタサイズの微妙な違いが性能に影響
- 手作業レイアウトのため、ショート・オープンが起こりやすい
- LVS は必須の品質ゲート
P&R
- 自動ツールでも、ピン名の不一致や階層の扱いで LVS エラーが発生
- ECO後の整合性確認に必須
IP 統合
- 外部 IP のレイアウトと自社回路図の接続確認
- ピン名・階層名の不一致が典型的な問題
6. 誤解しやすい点・注意点
「DRC が通れば LVS も通る」は誤り
DRC は形状ルールのチェックであり、接続の正しさは保証しない。
「LVS は完全自動で解決できる」は誤り
- ネット名のマッピング
- 階層の扱い
- デバイスのマッチングルール
など、設計者の理解が必要。
抽出ルールの違いによる不一致
- 回路図側のモデルとレイアウト抽出モデルが異なると、デバイスパラメータ不一致が発生する。
7. LVS の全体フロー
flowchart LR
A[Schematic Netlist] --> C[LVS Compare]
B[Extracted Netlist
from Layout] --> C C -->|Match| D[一致 → LVS Clean] C -->|Mismatch| E[不一致 → Debug] %% コメント: LVS は2つのネットリストを比較する工程
from Layout] --> C C -->|Match| D[一致 → LVS Clean] C -->|Mismatch| E[不一致 → Debug] %% コメント: LVS は2つのネットリストを比較する工程
8. 関連する専門用語の整理
| 用語 | 定義 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| LVS | Layout と Schematic の一致検証 | テープアウト前の必須チェック |
| ネットリスト | 回路の接続情報を記述したデータ | LVS の比較対象 |
| 抽出(Extraction) | レイアウトからネットリストを生成する工程 | レイアウトの実装内容を論理化 |
| ショート | 本来別ネットが接続してしまう状態 | 重大エラーとして修正必須 |
| オープン | 本来接続すべきネットが切れている状態 | 動作不良の原因 |
| 階層 LVS | 階層構造を保ったまま比較する手法 | 大規模回路の効率的検証 |
| PEX | 寄生素子抽出 | タイミング・アナログ特性解析に使用 |
9. まとめ
- LVS は「回路図」と「レイアウト」の整合性を検証する工程
- ショート、オープン、デバイス不一致など、製造後の致命的な問題を事前に検出
- 抽出(PEX)とネットリスト比較が中心
- DRC と LVS は役割が異なる
- カスタムレイアウト、P&R、IP 統合など、実務のあらゆる場面で必須
- LVS の理解は、物理設計・アナログ設計・IP 統合の基礎スキルとして重要

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