Synopsys、GTC 2026でNVIDIAとの連携によるデジタルツイン・Agentic AIの最新成果を紹介

技術ニュース

2026年3月16日 – SynopsysはNVIDIAとの戦略的パートナーシップを大きく前進させ、GPUアクセラレーション、デジタルツイン、マルチフィジックスシミュレーション、そしてエージェンティックAIを活用した次世代エンジニアリング基盤を発表した。半導体、ロボティクス、自動車、材料工学など幅広い産業で、従来のCPU中心のワークフローを大幅に高速化し、設計精度と開発効率を向上させる取り組みが示された。

発表の背景

近年、半導体設計や材料工学、ロボティクス、自動車開発では、ソフトウェア定義化・マルチフィジックス化・AI活用が急速に進んでいる。しかし、これらのワークロードは計算量が膨大で、従来のCPUベースのシミュレーションでは時間・コスト・精度の面で限界が生じている。

NVIDIAのGPUアーキテクチャ(特にBlackwell世代)と、SynopsysのEDA・シミュレーション・材料モデリング技術を組み合わせることで、「シリコンからシステムまで」統合的に高速化するエコシステムが形成されつつある。SynopsysとNVIDIAの協業は、単なるEDA高速化に留まらず、

  • デジタルツイン
  • ロボティクスのSim2Real
  • 材料工学の量子化学計算
  • エージェントAIによるEDA自動化
    といった領域まで拡大している点が特徴である。

発表内容の詳細

GPUアクセラレーションによる計算負荷の高いワークロードの高速化

SynopsysはNVIDIA GPUに最適化されたアプリケーション群を拡大しており、複数の企業が具体的な成果を発表した。

Applied Materials:量子化学シミュレーションを最大30倍高速化

  • Synopsys QuantumATK × NVIDIA cuEST により、CPU比で最大30倍の高速化
  • 25,000原子規模のアモルファス材料シミュレーションでGPUがCPUを大幅に上回る性能
  • 材料工学の研究開発サイクルを短縮し、次世代半導体材料の探索を加速

Honda:大規模・非定常CFDをGPUで実用化

  • Ansys Fluent × NVIDIA GB200 GPU
  • 1,920 CPUコア → 4基のGB200で34倍高速化、38%コスト削減
  • 自動車空力設計の高精度CFDが現実的な時間で実行可能に

Astera Labs:SerDes設計の回路シミュレーションを3.5倍高速化

  • Synopsys PrimeSim × AWS EC2 B200 GPU
  • 高速SerDesのトランジスタレベル検証を短縮し、AI向け接続チップの市場投入を加速
  • クラウドGPUによりインフラ構築の負担も軽減

デジタルツイン × マルチフィジックスで「Physical AI」を推進

Synopsysはロボティクスや自動運転向けに、現実世界の物理を忠実に再現するシミュレーション基盤を提供している。

Analog Devicesとの協業

  • NVIDIA Isaac Sim(Omniverse)にSynopsysの物理シミュレーションを統合
  • 触覚センサ、ToFカメラ、ロボット操作ベンチマークの高精度デジタルツインを構築
  • Kawasaki Heavy Industriesなどが採用し、Sim2Realギャップを縮小
  • 実機テストの反復回数を削減し、ロボット開発の効率を向上

この取り組みは、ロボティクスにおける「Physical AI」実現に向けた重要なステップである。


Agentic AIによるEDAワークフローの自動化

SynopsysはNVIDIAと共同で、ハードウェアアクセラレーションされたエージェントAIスタックを構築している。

  • Synopsys AgentEngineer™
  • NVIDIA Agent Toolkit
  • NVIDIA NIM推論サービス
  • Nemotronモデル

これらを組み合わせることで、複雑なEDAタスクをマルチエージェントが協調して実行する「L4レベルのEDA自動化」を実現する。


技術的ポイント

GPU最適化によるPPA外の「計算性能」向上

従来のEDA改善はPPA(Power, Performance, Area)が中心だったが、今回の発表はEDAそのものの計算性能を劇的に向上させる点が特徴。

  • SPICEシミュレーションの高速化
  • CFD/マルチフィジックスのGPU化
  • 量子化学計算のGPUアクセラレーション
  • デジタルツインのリアルタイム化

これにより、設計サイクル全体の短縮が可能になる。

マルチフィジックス × デジタルツインの統合

Synopsysは電子設計(EDA)+物理シミュレーション(CFD/構造/材料)+AIを統合する方向性を明確にしている。

これは、

  • 自動車(空力+電子制御)
  • ロボティクス(力学+センシング)
  • 半導体製造(材料+プロセス)
    など、複雑化する製品開発に不可欠なアプローチである。

考察と今後の展望

EDAのGPU化が本格的に進展

Blackwell世代GPUの普及により、SPICE、STA、EM/IR、DFTなどEDA全般のGPU化が加速すると予測される。

デジタルツインが製造業の標準ワークフローに

ロボティクス・自動車・半導体製造で、「実機テスト前にほぼ全てを仮想空間で検証」という流れが強まる可能性がある。

Agentic AIが設計フローを再定義

EDAの一部タスクはエージェントが自動化し、エンジニアはより高度な意思決定に集中するワークスタイルが一般化する。


参考ソース

Synopsys Showcases NVIDIA Partnership Impact and Ecosystem Innovation at GTC 2026
Customers across industries are revolutionizing product design and accelerating innovation with NVIDIA-accelerated engin...

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