この記事で学べること
- SystemVerilog-AMS の位置づけと目的
- アナログ/デジタル混在設計における役割
- 基本概念(discipline、nature、analog block、connect module など)
- 実務での利用シーン(AMS 検証、ミックスシグナル SoC、IP モデリング)
- 誤解しやすいポイントと注意点
- 関連用語の体系的理解
概要(全体像)
SystemVerilog-AMS は、SystemVerilog をベースにアナログ・ミックスシグナル(AMS)設計を統合的に記述するための拡張仕様です。
従来の Verilog-AMS の後継として位置づけられ、デジタル検証で広く使われる SystemVerilog と、アナログ動作を連続時間で記述するアナログ HDL を一つの言語体系に統合しています。
これにより、SoC のような デジタル・アナログ混在システムを単一の言語でモデル化・検証できる点が最大の特徴となります。
なぜ重要なのか(背景・目的)
背景
- 近年の SoC は、RF、電源、センサ、アナログフロントエンドなど アナログブロックを多数含む
- デジタル検証は SystemVerilog/UVM が主流だが、アナログは SPICE/Verilog-A など別系統
- AMS の振る舞いをデジタル検証環境に統合するニーズが急増
目的
- デジタルとアナログのモデルを統一的に扱う
- 高速なミックスシグナル検証(Mixed-Signal Verification)を可能にする
- 抽象度の異なるモデル(SPICE → Verilog-A → SystemVerilog-AMS)を統合管理
- UVM などのデジタル検証手法を AMS に拡張
SystemVerilog-AMS は、アナログとデジタルの「言語の壁」を取り除き、システムレベルでの整合性検証を効率化するための基盤技術である。
基本概念の整理
discipline(ディシプリン)
定義:信号の物理的性質(電圧、電流、位相など)を表す属性セット
例:electrical、logic
実務での意味:アナログ端子の意味付けを統一し、ツールが正しい方程式を適用できるようにする。
nature(ネイチャ)
定義:discipline を構成する物理量(例:電圧=potential、電流=flow)
例:potential V; flow I;
実務での意味:アナログシミュレーションで扱う変数の種類を定義する。
analog block
定義:連続時間のアナログ動作を記述するブロック
例:
analog begin
V(out) <+ gain * V(in);
end実務での意味:Verilog-A と同様に、アナログ振る舞いを方程式で記述する。
connect module
定義:アナログとデジタルの接続ルールを定義するモジュール
例:A/D、D/A の境界での変換
実務での意味:ミックスシグナル SoC で必須。デジタル信号をアナログ値に変換する際のルールを統一できる。
wreal(ワイヤリアル)
定義:SystemVerilog の real 型信号をワイヤとして扱うための拡張
例:wreal adc_in;
実務での意味:アナログ値を「離散時間・連続値」で扱う高速モデルに使われる。
モデリング階層
- トランジスタレベル(SPICE):最も正確だが遅い
- Verilog-A:アナログ振る舞いモデル
- SystemVerilog-AMS:アナログ+デジタル統合モデル
- SystemVerilog(wreal):高速抽象モデル
実務での具体的な利用シーン
ADC/DAC のミックスシグナル検証
- デジタル制御ロジック(SystemVerilog)
- アナログ変換器(SystemVerilog-AMS または Verilog-A)
- UVM テストベンチと統合し、機能検証を高速化
電源管理 IC(PMIC)の SoC 統合検証
- LDO、DC-DC、センサ回路などのアナログブロック
- デジタル制御 FSM と連携した動作確認
PLL、SerDes、RF フロントエンドの抽象モデル化
- SPICE では遅すぎる大規模システムの検証を高速化
- ループ安定性やロック時間の抽象モデルを AMS で記述
アナログ IP のトップレベル SoC 統合
- デジタル SoC チームとアナログ IP チームの共通言語として利用
- AMS モデルを使うことで、早期に統合検証が可能
誤解しやすい点・注意点
SystemVerilog-AMS は Verilog-AMS の単純な後継ではない
- SystemVerilog の構文体系に統合されている
- UVM などのデジタル検証手法と親和性が高い
SPICE の代替ではない
- 精度よりも検証効率を重視した抽象モデル
- トランジスタレベルの詳細解析には SPICE が必要
wreal と analog block は用途が異なる
- wreal:離散時間・連続値 → 高速
- analog block:連続時間・連続値 → 精度重視
- 目的に応じて使い分ける必要がある
connect module を正しく設計しないと誤動作する
- A/D 境界の扱いは AMS 検証の最重要ポイント
- 電圧→ロジック変換の閾値設定などに注意
関連する専門用語の整理
| 用語 | 定義 | 例 | 実務での意味 |
|---|---|---|---|
| discipline | 信号の物理的属性セット | electrical | アナログ端子の意味付け |
| nature | discipline を構成する物理量 | potential, flow | アナログ変数の定義 |
| analog block | 連続時間のアナログ記述 | V(out) <+ … | アナログ振る舞いモデル |
| connect module | A/D 境界の変換ルール | logic2electrical | ミックスシグナル統合 |
| wreal | 離散時間・連続値の信号 | wreal vin | 高速抽象モデル |
| mixed-signal verification | アナログ+デジタルの統合検証 | ADC/DAC 検証 | SoC 検証の必須工程 |
まとめ
- SystemVerilog-AMS は SystemVerilog とアナログ HDL を統合したミックスシグナル記述言語
- discipline、nature、analog block、connect module などの概念が基盤
- SPICE 〜 Verilog-A 〜 SystemVerilog-AMS 〜 SystemVerilog の階層を使い分けることが重要
- SoC の AMS 検証、ADC/DAC、PLL、PMIC などで広く利用される
- デジタル検証環境(UVM)と統合できる点が最大の強み

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