レイアウトレベル EM/IR 解析(Layout-level EM/IR Analysis)とは、レイアウト段階で配線やビアの電磁界挙動を解析し、寄生要素や信号劣化を事前に把握するための手法です。高速化・高周波化が進む設計では、回路図だけでは見えない問題を早期に発見できます。
なぜEM解析が必要なのか
近年の電子機器は、高速I/O、RF通信、パワーエレクトロニクスなど、電磁界の影響が無視できない領域で動作しています。その結果、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 信号の遅延・反射・クロストーク
- RF回路の利得低下や周波数ずれ
- パワエレ基板での電流集中・発熱
- EMI/EMC不良
これらは回路図や単純な回路シミュレーションでは見えず、空間的な電磁界の解析が必要になります。
EM解析で分かること
EM解析では、以下のような物理量を可視化・定量化できます。
- 電界・磁界の分布
- 電流密度・電流経路
- Sパラメータ(反射・伝送特性)
- インピーダンス・寄生要素
- 放射パターン・利得
これらを理解することで、設計の「なぜこうなるのか?」が見えるようになります。
EM解析の主な用途
用途を3つのカテゴリに整理すると理解しやすいです。
① 配線・インターコネクト(高速デジタル / SI)
- 伝送線路の遅延・反射
- クロストーク
- ビア・配線の寄生抽出(RLC)
- Sパラメータ抽出
→ 高速I/OやSerDesで必須
② RF・アンテナ
- アンテナの利得・放射パターン
- RFIC/PAの寄生要素
- パッケージの寄生インダクタンス
→ RF性能は電磁界そのものが支配
③ パワーエレクトロニクス
- 電流集中による発熱
- スイッチング時の磁束・ノイズ
- EMIの発生源解析
→ 大電流・高速スイッチングで問題が顕在化
EM解析の種類
● 2D / 2.5D / 3D
- 2D:断面での伝送線路解析
- 2.5D:基板配線の寄生抽出(高速で実務でよく使う)
- 3D:立体構造全体を解析(精度高いが重い)
● 時間領域 vs 周波数領域
- 時間領域(FDTDなど):過渡応答が得意
- 周波数領域(FEM/MoMなど):Sパラ抽出が得意
● 主なソルバー
- FEM(有限要素法)
- FDTD(時間領域差分法)
- MoM(モーメント法)
- PEEC(部分要素等価回路法)
実務でよくある“EM解析あるある”
- GNDスロットでEMIが急増
→ リターンパスが迂回し、磁界が強くなる - ビアの寄生で高速信号が劣化
→ 2.5D解析で寄生L/Cを抽出すると原因が見える - パワエレ基板で電流集中
→ コーナーや狭い配線で電流密度が偏る - RFICの寄生容量で利得が落ちる
→ パッド・配線の寄生が無視できない
EMインデザイン解析のメリット
- レイアウト段階で問題を発見できる
- 後戻りコストを大幅に削減
- 回路シミュレーションの精度向上
- SI/PI/RFの設計品質が安定
- 製品の信頼性向上
特に高速化が進む現代では、EM解析なしの設計はリスクが高いと言えます。
まとめ
レイアウトレベル EM/IR 解析は、
「回路図では見えない問題を、電磁界の視点で理解するための技術」
です。
高速デジタル、RF、パワエレなど、あらゆる分野で必須になっています。
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