SystemC は、C++ をベースにしたハードウェア記述・システムモデリングのためのライブラリ/標準規格です。RTL 設計より上位の抽象度で、アーキテクチャ検討・性能評価・高位合成(HLS)・トランザクションレベルモデリング(TLM) を行うために使われます。
1. SystemC とは何か
SystemC は、C++ 上で動作する ハードウェアモデリング用のクラスライブラリであり、IEEE 1666 として標準化されています。
● SystemC の特徴
- C++ ベース → ソフトウェア開発者にも馴染みやすい
- ハードウェアの並列動作を表現できる
- 抽象度を自由に変えられる(ビット精度〜TLM)
- シミュレーションが高速
- HLS(高位合成)ツールと相性が良い
2. SystemC が使われる場面(実務視点)
● アーキテクチャ検討
- キャッシュ構成
- バス帯域
- パイプライン段数
- メモリ階層
などを、RTL より高速に評価できる。
● 性能シミュレーション
- SoC 全体のスループット
- レイテンシ
- 帯域ボトルネック
- DMA・バス競合の解析
● TLM(Transaction-Level Modeling)
- IP 間通信を抽象化して高速にシミュレーション
- ソフトウェア開発を RTL 完成前に開始できる
● 高位合成(HLS)
SystemC で書いたモデルを RTL に変換するフローが一般的。
3. SystemC の基本構造(最初に覚えるべきこと)
● モジュール(sc_module)
SystemC の基本単位。
SC_MODULE(MyModule) { SC_CTOR(MyModule) { // コンストラクタ } };● プロセス(SC_METHOD / SC_THREAD)
並列動作を表現する。
SC_METHOD(run); sensitive << clk.pos();● 信号(sc_signal)
RTL の wire/reg に相当。
sc_signal data;● 時間(sc_time)
シミュレーション時間を扱う。
wait(10, SC_NS);4. TLM(Transaction-Level Modeling)の基礎
SystemC の最大の強みは TLM 2.0 による高速シミュレーションです。
● TLM の特徴
- 信号レベルではなく「トランザクション」で通信
- バスの詳細を抽象化
- 数百倍〜数千倍高速に動く
- ソフトウェア開発を前倒しできる
● TLM の典型用途
- SoC のバスモデル
- メモリモデル
- DMA モデル
- CPU モデル(ISS と連携)
5. SystemC と RTL の違い
| 項目 | SystemC | RTL |
|---|---|---|
| 抽象度 | 高い | 低い |
| シミュレーション速度 | 早い | 遅い |
| 記述量 | 少ない | 多い |
| 主な用途 | アーキ検討、TLM、HLS | 実装、論理合成 |
| ソフトウェア連携 | 得意 | 苦手 |
SystemC は 設計の上流工程で使われることが多い。
6. SystemC を学ぶメリット(若手エンジニア向け)
● アーキテクチャの理解が深まる
RTL では見えにくい「システム全体の動き」が見える。
● ソフトウェアとの協調設計ができる
TLM モデルを使えば、RTL 完成前にファームウェア開発が可能。
● HLS への応用ができる
SystemC → RTL のフローは業界で一般的。
7. SystemC を使うときの注意点
● C++ の知識が必要
テンプレート・クラス・ポインタなどの理解が必須。
● RTL ほど厳密ではない
抽象度が高いため、RTL との乖離に注意。
● モデルの精度と速度のバランスが難しい
高精度にすると遅くなる。高速化すると精度が落ちる。
8. まとめ
SystemC は、
アーキテクチャ検討 → TLM → HLS → RTL
をつなぐ強力な技術です。


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